もともとこの少女はとても愛らしい顔立ちで、さらにその柔らかく甘い小さな声と、潤んだ無邪気な大きな瞳が加わると。
私はその場で思わず彼女を抱きしめそうになった。
しかし、そのとき、私の背後から声が聞こえた。「あら!」
振り返ると、一人の女性が部屋から出てきたのが見えた。きちんとした服装で、穏やかな雰囲気を持ち、年齢と容姿から見て、少女の母親に違いなかった。
どうやら、この少女は先ほど私を呼んでいたのではなく、彼女の母親を呼んでいたようだ。
「あ、紹介するのを忘れていた。こちらは義姉の河野恵美…」
伊藤諾がようやく私に紹介した。
「ママ!」
少女は女性を見ると駆け寄り、甘い声で呼びかけた。
女性は少女を抱き上げ、彼女の頬にキスをした。
「あなた、上手に弾けたわね。」
「ママ、いつバースデーケーキ食べられるの?」
「蕾ちゃん、もう少し待ってね。ろうそくを吹き消したらすぐよ!」
私の視線はずっとその少女の顔に釘付けで、もう目を離すことができなかった。
この母娘が抱き合う幸せな光景を見て、本当に羨ましく思った。
伊藤諾が軽く私の肩をたたいた。
やっと視線を戻して彼を見た。「どうしたの?」
「彼女が気に入った?」
「とても可愛いわ!」
伊藤諾は軽くうなずいた。
「義姉さんは多くの苦労を経験したんだ。小さな娘が事故に遭った後、義姉さんはショックに耐えられず、精神的に崩壊してしまった。ここ数年はうつ病に悩まされ、ほとんど自分のことができなくなり、しばしば自殺を図ろうとしていた。」
「理解できるわ。どんな母親も子供の不慮の事故を受け入れることはできないもの。お兄さんが一人でこの家庭を支えているなんて、大変ね。」
私が入ってきた瞬間から、伊藤暁はソファに座っていたが、彼の目は妻と娘でいっぱいだった。
娘がどこにいても、彼の視線はそこにあった。
妻がどこにいても、彼の注意はそこにあった。
今、河野恵美が娘を抱き上げると、彼はすぐに心配そうに娘を引き取った。
「ねえ、ママにはあまり長く抱っこさせないでね。ママは体調があまり良くないから、今はパパに抱っこさせてね。」
彼が非常に責任感のある男性であることがよくわかる。