第192章 彼の厚顔無恥を見くびっていた

受付の人が小声で私に告げた。「税務署の人が来て、帳簿を調査するそうです!」

帳簿調査?

それを聞いた瞬間、何かおかしいと思った。

昨日、私は田中遠三を脅すために臻一株式会社がここ数年脱税していることを持ち出したばかりだ。

でも、私は脅しただけで、実際に通報はしていない。

もしかして誰か他の人が通報したのだろうか?

この時点では、まだ田中遠三の考えがそこまで深いとは思っていなかった。

私は急いで財務室へ駆けつけた。

案の定、そこではスタッフが監査人を呼んで帳簿を調べていた。

周りには多くの従業員が集まり、小声で議論していた。

「松岡さん!」

誰かが小声で私を呼んだ。

振り返ると、沢田おばさんが給湯室の方から手を振っているのが見えた。

私はすぐに彼女の方へ歩いていった。