第216章 彼には何の弱みもない

車の中で、温井雅子は時々鈴木誠一に電話をかけていた。

私は窓の外を眺め、急速に後退していく街の景色に思いを馳せていた。

それらは私と田中遠三との過去のようだった……

彼はなぜこんなに恐ろしい人になってしまったのだろう?

温井雅子は電話を切って私の方を向いた。

「鈴木誠一は伊藤家に行ったわ。警察がまだ伊藤家にいるって!つまり、人は死んだけど、この事件はまだ調査が続くってことよ」

「はぁ!」

今の私の怒りは、何の役にも立たない。

「田中遠三って本当に怖い人ね!前はこんなに冷酷だとは思わなかったわ!」

温井雅子は感慨深げだった。

「そうね、私も前は彼がこんなに冷酷だとは知らなかった!まるで別人になったみたい!今の彼を受け入れることができないわ」

「ねえ、もしかして、彼は誰かに乗っ取られたんじゃない?」