あの悲鳴を聞いて、佐藤玉美母娘が危険な目に遭っているかもしれないと感じた。
急いで行って助けなければ。
思いがけず祐が振り返ってドアを閉めてしまった。
「もういいだろう、ここは山の上だし、大雨で視界も悪い。出て行ったら自分が転んで死ぬかもしれないのに、他人のことなんか構っていられるのか?」
「あなたも危険だって分かってるでしょ?危険だと分かっているなら、出て行って見てきて。もしも……」
その時、チェックのシャツを着たもう一人の男が言った。
「焦るな!斉藤明はもう探しに出たよ。自分の妻と子供だから、彼が責任を持つさ」
私はようやく周りを見回し、確かに広間に斉藤明の姿がないことに気づいた。
隅に座っているのは愛人だけで、彼女は爪やすりで爪を磨きながら、時々携帯を取り出して見ていた。