温井雅子が出かけると、半日が過ぎたように感じた。
おそらく私の痛みを心配して、医師は薬に麻酔を加えたのだろう。私はときどき意識がはっきりし、ときどきぼんやりしていた。
今、私はもう時間の経過がわからなくなっていた。
目が覚めるたびに、病室のドアの方を見やった。
伊藤諾が私を見に来ないかと。
温井雅子が戻ってこないかと!
しかし長い間待っても、温井雅子はまだ戻ってこなかった。
私が入院しているこの病室は、普通の二人部屋で、中央の壁にはテレビが掛けられていた。
テレビで放送されているドラマを見る気分ではなかったが、途中で入るニュースには少し関心を持った。
「福馬南通りで、青いスポーツカーが制御を失い、大型トラックと衝突……この事故により後続の数台の車が玉突き事故を起こし、1名が現場で死亡……他の負傷者は病院に搬送され治療中です。」