第283章 甘美な時間

西山荘園に戻った後、私は服を着替えた……

以前はいつも温井雅子たちと一緒に食事に行っていたけれど、今夜は伊藤諾と二人きりで外食する。

だから、少し念入りに身だしなみを整えた。

最近忙しすぎて、自分を手入れする時間もなかった。

お風呂から上がった後、ヘアピンで軽く梨花のようなゆるいカールをつけ、上半分をお団子にした。

クローゼットから長いワンピースを選んだ。私の好みは相変わらずで、このような素朴で優しい色合い、静かなワンピースに灰色のコートを合わせた。

梅色のカジュアルバッグを持ち、黒い羊革のブーツを履いた。

鏡の前で、ナチュラルクリームを少し塗り、梅色の口紅も少しだけ塗った。

清楚で上品な、鏡に映るこの顔を見て、かつての自分を思い出した気がした。

大学を卒業する前、私もこんなに素朴だった。