「彼も実はこの病院にいるのよ。そう遠くないから、自分で見に行ってみたら?でも心の準備はしておいた方がいいわ」
温井雅子はため息をついた。
私にショックを与えないように、本当は隠すつもりだったのが分かる。
でも、私は幻想の中で生きるよりも、真実を知りたい。
私はすでに全てを失った。何を恐れることがあるだろうか?
この病院の中にいる。
彼を見つけるのは簡単だった。
すぐに、温井雅子は私を別の病室に連れて行った。
ここは集中治療室だった。
ガラスのドア越しに、松岡晴彦がベッドに横たわっているのが見えた。彼の体にも同様に様々なチューブが挿入されていた。
彼の様子は、伊藤諾とあまり変わらない。
「一体どうなっているの?」
温井雅子はため息をついて、
「鈴木誠一が友人に調査を依頼したわ。あなたと伊藤諾が事故に遭った日に、松岡晴彦も交通事故に遭ったの。でも彼が事故に遭った場所は監視カメラの死角で、何の手がかりも見つからなかったわ。松岡晴彦が意識を取り戻さない限り、事故の原因は分からないままよ」