「祐仁、絶対に強引なことをしないでよ!あれは香港なんだから、油断しないでね!」
私は彼女にメッセージを返した。
「私がいない間に、時間があったら伊藤諾に会いに行って、彼と話をしてあげて!」
このメッセージを送った後、私は携帯の電源を切った。
その時、飛行機は離陸し始めた。
私はアイマスクをつけ、目を閉じて休んだ。
2時間ほどのフライトだから、少し眠れるかと思った。
しかし、ちょっと目を閉じたところで、遠くから二人の女性の小さな話し声が聞こえてきた。
「松岡小雲は来るかしら?」
この名指しの声に、私はすぐに目が覚めた。
最初は幻聴かと思ったが、こっそり振り返ってみると、案の定、私の後ろの一列隔てたところに葉山夢愛が別の女性と座っていた。
葉山夢愛は以前保釈されたが、裁判はまだ行われておらず、本来なら青木県を離れることは許されていないはずだ。それなのに今、自由に動き回れるなんて。