第331章 恥知らずな人

鏡の中の見知らぬ顔を見つめながら、私の田中遠三への愛はとうに干上がり、残っているのは憎しみだけだった。

いや、憎しみだけではなく、深い倦怠感もある。

できることなら、来世では二度と彼に会いたくない。

伊藤蕾のためでなければ、私は自分を犠牲にする必要などなかった。

しばらくして、私は温井雅子の方を向いた。

「私が彼を殺したらどうかな?」

普段は田中遠三を殺してやると口にしている温井雅子だが、今、私が冷静な表情でこの質問をすると。

彼女は驚愕の表情を浮かべ、慌てて手を振った。

「やめて、祐仁、あなた狂ったの?」

彼女は手を伸ばして私の額に触れた。「熱でもあるの?」

この時、私の心は古井戸のように静かだった。

私は首を振った。「ないわ、私は冷静よ」

温井雅子はようやく安堵のため息をついた。