第362章 田中遠三が残した手紙

この瞬間、私の心に何かが感じられた。

でも、完全には確信できなかった。

幸い、伊藤お母さんが隣で一生懸命に取り持ってくれて、食卓では私に次々と料理を取り分けてくれた。

そして、ついでに伊藤諾に言った。

「諾、あなたが以前、市立第一病院で植物状態だった時、ずっと小雲があなたの側で看病してくれたのよ。彼女はあなたのために寝る間も惜しんで、食事もろくにとらず、十数キロも痩せたのよ!」

伊藤諾がまだ口を開かないうちに。

松本佳代が笑いながら言った。

「あら...当初、伊藤諾が植物状態になったのは、松岡小雲と田中遠三の感情のもつれが原因でしょう。田中遠三が怒って、人を使って伊藤諾をこんな状態にしたんです。これは実際、松岡小雲が自己贖罪をしていただけのこと。苦労と言えば、私たちの病院には介護士がいて、24時間ケアできるのに。彼女が介護士を使いたくないと言うなら、それは仕方ないことですね。」

この言葉は少し耳障りだったが、彼女の言っていることは真実だった。

祐が彼を轢いたのだ...

祐は田中遠三の部下で、田中遠三の指示かどうかに関わらず、一般的には田中遠三の意向だと思われている。

私には反論の余地がなかった。

私は伊藤諾を一瞥した。彼は静かに食事を続け、これに対して何の異議も示さなかった。

まるで彼も松本佳代の言い分を黙認しているようだった。

伊藤お母さんはため息をついて、また言った。

「小雲はあなたのために鍼治療の効果をテストするために、まず自分の体に針を刺して、体中穴だらけにしたのよ。」

伊藤諾はそれを聞いて私を見た。

しかし松本佳代はまた笑って言った。

「お母さん、そのことはもう言わないでください。松岡さんは医療免許を持っていません。彼女が勝手に伊藤諾を治療するのは違法です。これが調査されたら、重ければ刑務所行きですよ。正直言って、自分を傷つけたとしても、同情に値しません。今どきの時代に、まだ悲劇のヒロインごっこをしているなんて。それに、私たちの病院には名の知れた漢方医がたくさんいて、誰を選んでも松岡さんより百倍優れています。それなのに彼女が自分でやろうとするのは、自分にも伊藤諾にも責任を持っていないということです。」

私の伊藤諾に対するすべての献身、すべての好意が、松本佳代の口から出ると。

すべて価値のないものになってしまった。