第364章 彼と葉山夢愛には婚約があった

そんな言葉に、私は衝撃を受けた。

私は全く知らなかった。

田中遠三と葉山夢愛にはこんな過去があったなんて?

彼が命を狙われていたって、いつの話?

なるほど、あの貧しい大学生たちの中から、彼がまっさきに葉山夢愛を選んだのは、恩返しのためだったのか?

どうして彼は私に話してくれなかったの?

もっと詳しく聞きたかったけど、この人たちは話題が行き過ぎたと気づいたようだった。

そして話題は変わった。

その後、料理が運ばれてきて、私は沢田家の親戚たちと食事を共にした。

一時間後、私が帰ろうとしたとき、沢田お母さんは私に赤い封筒を渡してくれた。

外に出てから封筒を開けて数えてみると、1万1円入っていた。

私は笑いながら沢田書人に尋ねた。

「これはどういう意味?」

「万に一つ、つまり母さんがあなたをとても気に入ったってこと!沢田家の嫁になってほしいって願ってるんだよ!」

「ははは、それは...残念ながら無理そうね。私はもう人妻だから!はい、これ返すわ。私の任務は無事完了したわ」

私は赤い封筒を沢田書人に返した。

私はただの代役で、本人じゃないんだから、このお金は受け取れない。

沢田書人は車のキーを取り出して、

「送っていくよ!」

「いいの、帰らないわ。ちょっと用事があるの!後で帰るから」

「どこに行くの?こんな遅くに...」

「あ、大丈夫、もうネットでタクシー呼んだから」

配車サービスの車はすぐに到着した。

ドアを開けて乗り込もうとしたとき、沢田書人が追いかけてきた。

「小雲、やっぱり僕のことを信用してないんだね。僕はどうすれば、君に親友として見てもらえるんだろう?」

私は彼に手を振って、

「あなたは考えすぎよ。実は私、あなたのこと信頼してるわ。私たちはずっと友達でいられるわ」

言い終わると、車は走り出した。

沢田書人はずっとその場に立ち、私を見送っていた。

運転手のおじさんは笑いながら冗談を言った。

「お嬢さん、あの若い男性は明らかに友達以上になりたいと思ってるよ。君の人生でもっと重要な人になりたいんだろうね」

私も軽く笑って、

「そういう縁はないのよ。人によっては一生友達でいるしかないの。運転手さん、市立第一病院までお願いします」

30分後。

車は市立第一病院の正門前で止まった。