温井雅子は深いため息をついた。
「祐仁、実はもうそんなに年月が経ったのよ。真相はもう重要じゃないわ。どうせ田中遠三は...もう死んでしまったんだから。すべての恩讐は塵は塵に、土は土に返させましょう。あなたが知れば知るほど、後悔して、どんどん辛くなるだけよ」
「辛いのは辛いけど、一生自分を騙して生きていくのはごめんだわ」
「でも、田中遠三はもういないのよ。彼には両親も兄弟もいない。どこに真相を探しに行くの?」
温井雅子がそう尋ねた途端。
鈴木誠一が答えを出した。「彼には青木山のあのお寺にいる叔母さんがいるじゃないか?」
温井雅子はすぐに彼を蹴った。「あなたばかり賢くて、おしゃべりね。言わないと気が済まないの?」
私は温井雅子の腕を軽く叩いた。「大丈夫よ、彼の言うことは正しいわ。実は彼が言わなくても私は考えていたの。明日行ってみるつもりよ」
「祐仁、本当に必要ないわ。過去のことは過去のままにしておきましょう!」
私は温井雅子と議論しなかった。
私はとにかく白黒はっきりさせたい性格で、何事もはっきりさせないと気が済まない。
少しでもあいまいなことは許せない。
この夜食は長く続き、午前1時まで続いた。
温井雅子は酔ったと言い張り、私の家に泊まりたがった。
彼女が本当に酔っていないことは見て取れた。ただ口実を作って私に付き添いたかっただけだ。
私は彼女を引き止めず、彼女と鈴木誠一を家に帰らせた。
みんな大人なのだ。
どんなに辛い試練でも、自分で乗り越えられる。
この夜、私は眠れなかった。
ベッドの上で寝返りを打ち、枕を抱きながら何度も転がった。眠りたいのに、頭の中は異常に冴えていた。
夜が明ける頃になってようやく、うとうとと眠りについた。
しかし長くは眠れず、ドアベルの音で目が覚めた。
起きてドアを開けると、沢田書人が立っていた。左手には包装された朝食、右手には書類入れを持っていた。
よく見ると、それは私が車に置き忘れた、田中遠三からの手紙だった。
「こんなに目の下にクマができて、昨夜もよく眠れなかったの?」
「うん、不眠だったわ」
「私が思うに、及川先生が出してくれた薬を飲んでみたらどう?」
沢田書人は包装された朝食をテーブルに置いた。