夕暮れ時、沈みゆく太陽の光が深山家に差し込み、この家に一筋の哀愁の色を染め付けていた。
二階の主寝室で、賀川心は一人で自分の荷物をまとめていた。
着替えの服、靴、靴下、タオル……彼女は日常で必要なものだけを持っていくことにし、それも大きくない旅行カバンに詰め込んだだけだった。
この部屋は彼女が自ら手をかけて飾り付けたもので、家具も全て彼女が選んだものだった。しかし、これからはもう彼女が住むことのできる場所ではなくなる。
彼女は振り返り、壁に掛けられた60インチのウェディング写真を一瞥した。写真の中の彼女は輝くような甘い笑顔で、幸せそうに隣の男性を抱きしめていた。しかし今の彼女は憔悴しきった姿で、見るに堪えないほどだった。
こういうものは今夜にでも捨てられてしまうのだろう。