夏目美香は一番左側の家を指さした。
ドアは開いていて、二人の女性は招かれもしないのに、まるで自分の家に入るかのように中に入った。
しかし、家に足を踏み入れた途端、彼女たちは立ち尽くした。
木下奈々は顔を上げるとすぐに、口の端から血を流している息子を見た。夏目美香は目の前の光景に驚愕した。
「義彦、どうしたの?誰にやられたの?」木下奈々は息子に駆け寄り、口元の血を拭きながら、心配のあまり唇を震わせた。
彼女は美香に呼ばれてきたのだ。息子の義彦が家で祝日を過ごさず、ここに賀川心を探しに来たと聞いた。しかし、息子が誰かに殴られているとは思ってもみなかった。
誰が殴ったのか、誰が彼女の息子に手を出す勇気があるのか、命知らずか。
賀川心はこの二人の女性を見た瞬間、気分が最悪になった。彼女は自分の指をきつく握りしめ、彼らに怒鳴られ、いじめられた記憶が無意識のうちに浮かんできた。