第64章:子供は醜い

「子供が十数日も早く生まれるなんて、どうして分かるっていうの」木下奈々は息子を睨みつけたが、口元の笑みは消えず、唇を引き締めることができないようだった。「それに、美香のお爺さんが病気で入院したのよ。あの子は親孝行だから、行くなとは言えないでしょう。あなたが悪いのよ、いつも忙しいばかりで、美香とちゃんと過ごす時間もないし、実家に帰るときだって彼女一人で行かせて」

木下奈々は息子を叱り続けた。今や彼女の目には、息子よりも大切な孫を産んでくれた嫁の方が上に見えていた。

車は平沢市へと向かい、500キロの距離は遠くはないが、市街地は渋滞が多く、6時間以上かけてようやく平沢市のある女性専門病院に到着した。

これは料金の高い私立病院だったが、もちろん醫師の資質も悪くなく、ここで出産する妊婦は大きな公立病院に劣らなかった。