第83章:こんなに大切に思っていたなんて

賀川心が夜都に着いたのはすでに夕方だった。彼女は白山雨子に縁子を連れて、道中で夜都のある不動産会社に依頼して借りた家に行かせ、自分は直接タクシーで夜都市民病院へ向かった。

道中、彼女の心臓はドキドキと鼓動し、落ち着かなかった。強く握りしめた指の爪は、手のひらの肉に食い込んでいた。

病院のスタッフに尋ねた後、彼女は左側の救急センターの5階へ向かった。

この時、5階の廊下にはかなりの人がいて、家族と思われる人々の他に、公安警察の人々もいた。

休憩エリアでは二人の老人が泣いているようだった。白髪の老婦人は涙を拭きながら、時折手の杖を置き直していた。彼女の隣の老人は妻をしっかりと支え、背中をさすっていた。

賀川心は完全に呆然としていた。白衣を着た人が通るたびに彼女は引き止めて、今日交通事故に遭った二人の怪我人の状態を尋ねた。しかし医師や看護師からの答えはいつも「まだ手術中で、現在の状況は不明」というものだった。