第79章：葉山様

十月、夜都はすでに深まる秋を迎え、秋風が寂しく吹き、道端の木々をサワサワと揺らし、しばらくすると黄色く枯れた落ち葉が地面一面に散りました。

黒いロールスロイスが市立人民病院の駐車場に停まりました。深山義彦と新婚の妻である夏目美香が車から降り、黒いサングラスを外し、さっと服装を整えると、一人は花束を抱え、もう一人は果物を手に持って病院へと向かいました。

夏目美香は真っ赤に輝く唇を尖らせ、不満げな表情を浮かべていました。

「義彦、どうしてわざわざ病院に来てこのお爺さんを見舞わなきゃいけないの？会社の人事部の人に送らせればいいじゃない？」夏目美香は夫の腕にしがみつきながら、病院の濃厚な消毒液の匂いを嗅ぐことや、がん患者のやつれた姿を見ることを想像すると、吐き気を催しました。それに、ただの老人が病気で入院しているだけで、親戚でもないのに。必要なの？