お城の外に着くと、警備員が彼らの車を止めた。木下奈々も車から降りざるを得なかった。
「賀川心に会いたいの。中に入って伝えてくれない?」木下奈々は不機嫌そうに言い、顔を長く引き伸ばしていた。今日は人に頼みごとをしに来たことをすっかり忘れていた。
警備員も相手が誰なのか分からなかったが、この様子を見ると50歳くらいで、賀川さんの故郷の親戚かなにかだろうと思い、彼女を困らせることなく、直接中に入って報告した。
賀川心は午前1時か2時頃に帰ってきたばかりだった。葉山大輔はまだ病院にいて、彼女が病院でよく眠れないことを心配し、運転手に彼女を家に送らせるよう主張した。
まだ妊娠9週間ほどの彼女は相変わらず眠りがちで、今もまだ起きていなかった。
白山雨子から電話がかかってきて、やっと目を覚ました。