朝、賀川心は珍しく夫と一緒に起床した。妊娠11週目の彼女の体調はかなり良くなり、以前ほど眠気に襲われることもなくなった。ただ、吐き気の症状はまだ時々現れていた。
葉山大輔の首の傷はほぼ完治していたが、傷跡の痕はまだ消えていなかった。
彼女は軟膏を取り出し、人差し指に少しだけ取って、その傷跡の上に優しく塗った。
「魚介類や辛いものは食べないでね。あ、そうだ、お昼は運転手に弁当を届けさせるわ」賀川心は傷パッチを貼りながら注意した。彼が変なものを食べて傷が炎症を起こすのが心配だった。
葉山大輔は軽く微笑み、手を伸ばして彼女の頬を軽くたたいた。
「わかってるよ!」
「それから、もう人と喧嘩しないで」賀川心は真剣な表情で言った。
彼が怪我をしたとき、自分がどれだけ心配したか。二度とそんなことがあってほしくなかった。