翌日、深山義彦は自分で退院手続きを済ませた。病気は良くなったものの、彼はまだ憔悴しきっていて、顔色は血の気がなく青白く、唇さえも白っぽかった。
病院の玄関を出ると、彼は眩しい陽光を手で遮った。五月の陽光は暖かかったが、残念ながら彼の心までは照らさなかった。
路上でタクシーを拾い、会社には行かず、直接家に帰ることにした。
今は何をする気力も湧かず、そんな心の余裕もなかった。できることなら睡眠薬を何錠か飲んで、数日間眠り続けたいと思った。
深山家はいつものように静まり返っていて、寂しさが漂っていた。門の前の警備員さえも眠っていた。
普段なら木下奈々の友人や麻雀仲間が訪ねてくることもあったが、今は奈々が入院しているため、誰も来ていなかった。
家の中は特に静かで、子供の泣き声以外は何も聞こえなかった。