第319章:深山宏樹を送り出そう

廊下で、深山宏樹は朝食を食べていた。彼の手には前回呉羽敏子が買ってきたおもちゃの猫を抱えていた。食べ終わると、彼はおもちゃを抱えてリビングに入った。

「おばあちゃん……」木下奈々を見るなり、深山宏樹は甘えた声で呼びかけ、小さな目をパチパチさせながら、奈々の側に歩み寄り、おばあちゃんの膝に顔をうずめた。

木下奈々はイライラしたため息をついた。もう何度ため息をついたかわからないほどで、その切れ長の目には今、涙がいっぱいに溜まっていた。

この子は自分がここまで育ててきたのに、今は手放さなければならない。彼女もとても名残惜しく思っていた。しかし今や世間の人々はこの子が自分の孫ではないことを知っており、彼女も何度も子供を連れて親戚や友人の前で自慢していたことで笑い者になっていた。