賀川心は縁子を自分の腕の中に抱き寄せ、警戒心を持った目で夫を見つめていた。まるで彼が縁子を連れ去ろうとしているかのように。
葉山大輔は仕方なく、先に部屋を出ることにした。
母親が今回、妻の心の結び目を解いてくれることを願っていた。
夏目静子は義理の娘の顔色がまだ正常に見え、涙の跡はあるものの、今は泣いていないことに安心した。彼女は車椅子を押して近づき、賀川心の袖を手で掴み、優しい口調で言った。「心、お母さんはあなたが辛いのを知っているわ。でも裁判所がそう判決を下した以上、少し前向きに考えなさい。縁子が深山家に行ったとしても、彼女はあなたの子供であることに変わりはないわ。これからも子供に会いに行くことができるのよ。」
夏目静子は優しい言葉で諭し、顔に慈愛に満ちた笑みを浮かべた。以前と同じように、非常に親切で優しい様子だった。