西苑団地12棟に着くと、深山義彦は1901号室のインターホンを何度も押し続けた。彼の心臓は胸から飛び出しそうだった。
彼はこの瞬間、ドアが開いて妻と子供の顔が見られることを切望していた。そうすれば彼らを連れて家に帰ることができる。葉山大輔も心姉を探していることを知っていたので、自分が一歩先に彼らを連れ戻したいと思っていた。
十数回インターホンを押しても、誰も出てこなかった。深山義彦は眉間にしわを寄せ、さらに強くドアを叩き始めた。その音は向かいの1903号室の住人にまで聞こえるほどだった。
1903号室には中年夫婦が住んでおり、ドアを開けたのは50歳ほどの女性だった。
女性は男性がずっとドアを叩いているのを見て、声をかけた。「若いの、もう叩くのはやめなさい。ここに住んでる娘さんは8時前に出勤したわよ。今は誰もいないわ」