しかし彼の手が下りた瞬間、彼女は力強くそれを払いのけた。
葉山大輔の胸が詰まり、一瞬息ができなくなる感覚に襲われ、目に痛みを感じた。
これは結婚後、彼女が初めてこんなに冷たく彼の触れ合いを拒否したことだった。
「心姉……」葉山大輔はついに沈黙を破り、低い声で彼女の名前を呼んだ。
賀川心は淡々と「うん」と返事をしたが、彼女は振り向くことなく、自分の体をベッドの端、右端の方へと移動させた。もう少し動けば床に転がり落ちてしまいそうなほどだった。
「寝なさい、早く休んで、明日も仕事でしょう」彼女の声はとても冷たく、彼の耳には冷水を注がれるようだった。
葉山大輔は軽く拳を握りしめた。灯りの下で、彼の顔色が急に寂しげに変わった。
彼は唇を強く噛み締め、この瞬間、唇の間の血の味を感じることができた。