この時、縁子も目の前の子供を見ていたが、彼はおもちゃに手を伸ばそうとはしなかった。
彼は今、何も欲しくなかった。ただお母さんだけが欲しかった。
深山宏樹は縁子が自分を無視するのを見て、静かにそこに立ち、グライダーを左右に見回し、まるでボタンを探しているかのように、このおもちゃの遊び方を知りたがっていた。
しかし、彼はいくら調べても理解できなかった。
そのとき、小さな手が伸びてきて、彼の手にあるものを奪い取った。縁子はグライダーの尾部にある小さな引き紐を見つけ、その紐を引いてから、手にあるグライダーを放した。
ついにグライダーは飛び上がり、空中を2、3メートル飛んだ後、ゆっくりと降下して最後には部屋の入り口に落ちた。
深山宏樹は大喜びで、まるで宝物を手に入れたかのようだった。彼は急いで入り口に走り、そのグライダーを拾い上げ、抱きしめてから、縁子の前に歩み寄り、自分とほぼ同じ年頃の小さな男の子を見つめた。