「だから、あなたが困ったときの最初の反応は彼に助けを求めることなの?」羽柴明彦が目を細めて彼女を見る様子に、夏目芽依は一瞬何も言えなくなった。
「どうして私が助けを求めようとしていたって分かったの?私は...何も言ってないはずだけど...」
彼女は断言できる。この件は天と地と、母と叔父以外には、片桐恭平だけが不思議なことに知っていた。彼女は最も親しい友人の金田凛香にさえ話していなかった。
羽柴明彦は少し困ったように見えた。
「あなたのお母さんが今住んでいる家が、旧市街再開発プロジェクトの土地にあるからだよ。だから彼がこの土地を無事に落札して、あなたたちにより良い移転補償を提供してくれることを望んでいるんじゃないの?」
「すごい!」夏目芽依は崇拝に近い目で彼を見た。もちろん、ほぼ崇拝に近いだけだが。彼がこんなに察しがいいなら、最初からもじもじせずに言えばよかった。どうせ彼もこの土地が欲しかったのだから。