病院の病室。
林田希凛はソファに寄りかかりながら、廊下からヒールの音がカツカツと近づいてくるのを聞いた。
しばらくすると、病室のドアが開き、振り向くと若松朱音が入り口に立っていて、手には二つのフルーツバスケットを持っていた。
「お母さん?どうしてこんな時間に来たの?」
深夜だったため、当直の医師や看護師以外の見舞客はすでに帰宅していた。林田希凛がここに残れているのは、吉田左介が医師だからこそ、林田植木を見舞う人が他の人が享受できない特別待遇を受けられるからだった。
「あなたがいつも来てって言うからね〜」若松朱音はベッドの方を見た。最近、林田植木は長時間痛みに苦しんでおり、薬物で鎮痛する必要があった。身体的・精神的な不快感を和らげるため、時には適量の鎮静剤も使用していた。