「頭がおかしいのか?!」羽柴明彦は彼女の手を引き離した。「よくも俺の口を塞ぐなんて。」
夏目芽依はすぐに手を引っ込め、背中に隠した。「わ…私、実は故意じゃなかったんだよ。」
明らかに故意だった。
羽柴明彦は目を見開いて彼女を睨みつけた。いつもは冷たい表情をしているが、夏目芽依は初めて彼がこんな表情をするのを見て、おかしく思った。「羽柴明彦、あなたの目、意外と大きいのね。」
空気が凍りついた。二人はしばらく膠着状態になった。
「わかったわかった、さっきは私が悪かった」夏目芽依は彼の腕をつかんだ。「でも絶対に私と中條詩織のことをお母さんに言わないでね。母はいつも小言を言うけど、私のことをとても大事にしているから、私が誰かに殴られたと知ったら必ず飛んでいって彼女と命がけで戦うわ。今やっと問題が解決したところなのに、新しいトラブルを作らないほうがいいでしょ?」