「今夜はどんなイベントなの?」ホテルの入り口に着くと、夏目芽依は顔を上げて小声で尋ねた。
今夜のイベントは風光グループ傘下のホテルで開催され、盛大で華やかな様子が見て取れた。風光グループの女主人として、夏目芽依は約束通り正装して出席したものの、今になってもこのパーティーのテーマが何なのか分からなかった。
羽柴明彦は彼女の方を向いて、「何のイベントかが、お前にとって違いがあるのか?」と言った。
「あぁ〜」彼がそう言うことは分かっていた。芽依は仕方なく首を振った。違いがないだけでなく、たとえ彼が説明したとしても自分には何のことか分からないだろう。「ただ好奇心があっただけよ…」
似たような顔ぶれ、似たような挨拶、似たような杯の交換。誰も見ていないすきに、芽依は自分の頬に手を伸ばし、横に引っ張って少しでもリラックスさせようとした。そうしないと、この二つの筋肉はすぐに固まってしまうだろう。