第267章 心の悲しみ

「芽依ちゃん、この前持ってきた漢方薬、飲み始めた?賞味期限が短いものもあるから、短いものから先に飲まないとね。なくなったらまた人を遣わして持ってこさせるわ」入ってくるなり、羽柴おばあさんは夏目芽依の手を取って、次々と質問を浴びせかけた。もちろん、最も重要な質問はいつものことだった。

「飲みました…少しだけ…」

実は夏目芽依は嘘をつきたくなかったが、羽柴おばあさんの気持ちを傷つけたくもなかった。結局は相手の好意なのだから、自分も無理して数口飲んだこともあるし、少しは飲んだということにしておこう、嘘にはならないだろう、と自分に言い聞かせた。

「鈴木ママ」しかし羽柴おばあさんはそう簡単にごまかせる相手ではなく、すぐに鈴木ママを呼んだ。「この二人の漢方薬をちゃんと見ていてね、毎日時間通りに飲ませるのよ。これは体にいいものばかりだから、忘れないでね。あなたはまだ若いんだから、この七十八十の老いぼれが何をすべきか教える必要はないでしょう?」