羽柴明彦がドアを開けて入ってくるのを見て、夏目芽依は急いでパソコンの画面を見つめ、視線をそらさず、両手でキーボードをカタカタと打ち続け、わざと忙しそうな様子を装った。
羽柴明彦は彼女を無視し、真っ直ぐに机に向かって座り、机の上にある審査待ちの書類を手に取り、真剣に読み始めた。
この人はまだニュースを見ていないのかしら、何も聞いてこないなんて。彼が黙れば黙るほど、夏目芽依の心臓はドキドキと鳴り響いた。
「羽柴社長、」木村城太が入ってきて、たった今送られてきた資料を羽柴明彦の前に置いた。「これが全ての資料です。ご確認ください。」
机の上に置かれたのは中村景吾に関する全ての情報だった。羽柴明彦はそれを手に取り、注意深く一読した。「これは確かな情報か?」
「確かです。」木村城太はうなずいた。