第335章 不満なんてあるはずがない

「いとこ、おととし父が母にプレゼントしたイヤリングが突然見つからなくなったの。いとこの奥さんに聞いてもらえない?彼女が見かけなかったか?」羽柴美波は電話で尋ねた。

羽柴明彦は病院の廊下の角に立っていた。人が時々通り過ぎるので、彼はさらに二歩外に移動し、窓際に立った。

「お前の家のものを彼女が見るわけないだろう」

「でも、いとこの奥さんが昨日うちに来た時、二階で休んでいたでしょう?父と母の寝室もあの辺りだから、彼女が見つけて素敵だと思って試着して、そのあとどこかに置き忘れたかもしれないじゃない。だから聞いてみようと思ったの。母はあのイヤリングをとても大事にしていて、この数日家中をひっくり返して探しているのよ。ちょっと聞いてくれるだけで手間じゃないでしょう」羽柴美波は頼み込んだ。「もし聞いてくれないなら、私から直接いとこの奥さんに電話するわよ」