第341章 不安な気持ち

「羽柴さん、羽柴夫人、こちらは本日特別にお二人にご用意したデザート、アーモンドタルトでございます」白い服を着たシェフがテーブルに近づき、片手でデザートをテーブルに置きながら紹介した。

夏目芽依は顔を上げた。「あれ、あなたは前回ホテルにいた人じゃない?」

中村海斗はうなずいた。「はい、ここのシェフは私の師匠で、今日は手伝いに来ています。彼が羽柴さんは大切なお客様だとおっしゃっていたので、特別に新作のデザートをお持ちしました。どうぞお試しください」

「ありがとう」夏目芽依はお礼を言い、フォークを取って早速手を伸ばした。

羽柴明彦はすぐには箸を付けず、立ち上がって中村海斗と握手した。「この前はありがとう」

中村海斗はすぐに首を振った。「あの時は確かに弟が無謀でした。私はただ少し手を貸しただけです。羽柴さん、こちらは私の名刺です」そう言って、彼はポケットから名刺を取り出し羽柴明彦に渡した。「少しお話ししたいことがあるので、もしお時間があればお会いできればと思います」