第420章 私自身のために

羽柴明彦はその場に立ったまま、三人は彼に気づかなかったが、元々リビングのソファに座って新聞を読んでいた片桐润悟が彼に手を振った。

「明彦くん、こっちに来て少し座りなよ」

羽柴明彦は歩み寄り、彼の隣に座った。

「最近、恭平と新しいホテルプロジェクトで協力していると聞いたけど、どう?順調に進んでる?」片桐润悟が率先して尋ねた。

「まあまあです」羽柴明彦は頷いた。「実際には主に彼が担当していて、私はただ横から協力しているだけです」

「いやいや」片桐润悟は笑った。「恭平は君より二つ年上で兄貴分かもしれないが、ビジネス能力では君にはまだまだ及ばない。長年の経験があるんだから、必要な時には彼を助けてやってくれ」

「結局、私たちは家族なんだからね」

この言葉は耳障りだったが、羽柴明彦の表情は変わらなかった。彼はすでにそういう能力を身につけていた。