夏目芽依は箸を置いて、「お腹いっぱい」と言った。
「こんなに少ししか食べないの?」夏目智子が彼女の後ろから言った。「夜にお腹が空いたら、鈴木くんに何か作ってもらいなさい。空腹で寝ないで…」
夏目芽依は彼女が後で何を言ったのか聞かなかった。すでにドアを閉めていた。
この件について考えれば考えるほど憂鬱になった。ベッドにうつ伏せになり、昼間に持ち帰って夜に読むつもりだった契約書を研究する気にもならなかった。これは露骨な利用ではないのか?当初、高橋山雄は母娘を冷酷に捨て、今は重病にかかり親族のケアが必要になったから戻ってきたのか?表向きは自分の会社を彼女に任せると言いながら、実際は骨髄が適合するかどうかを気にしているだけ。
突然、携帯が鳴った。羽柴明彦からだった。
「高橋誠があなたに会いたいと言っている」