羽柴明彦は時計を見下ろして、「もう遅いから、家まで送るよ」と言った。
「え?」夏目芽依はとても驚いた。彼女がまだ頼んでもいないのに、羽柴明彦が自らこのことを持ち出したのだ。
「どうした、気が変わって帰りたくなくなったのか?」彼女の表情を見て、羽柴明彦は冗談めかして言った。「昨日は十分眠れなかったから、今日もまた一緒に寝たいのか?」
「そんなことないよ…」夏目芽依は顔を赤らめ、小声で言った。言い終わると、書斎から出て、ソファの上にまだ読み終えていない資料を丁寧に整理し、再びバッグに詰め込んだ。
羽柴明彦も出てきて、車のキーを手に取り、彼女のパンパンに膨らんだバッグを見て思わず尋ねた。「その中に何が入ってるんだ?今は社長になったからって、まだパソコンを抱えて走り回る必要があるのか?」