退社時間が近づき、秘書はようやくオフィスに戻り、整理し直した書類を夏目芽依の机の上に置いた。
「今日中に全部印刷するのは無理ね」秘書は彼女を見て言った。「でも明日明後日の会議で使う資料は先に印刷しておいた方がいいわ。そうしないと明日バタバタすることになるし、万が一彼らが急に会議の時間を早めたらもっと大変よ。以前もそういうことはよくあったから」そう言い残すと、彼女は立ち去った。
夏目芽依は一束の資料を抱えてコピー室へ向かった。しばらくすると、オフィスの人々は次々と退社し、やがて会社には彼女とまだオフィスで残業している若松結衣だけになった。
コピー機の音を聞きながら、機械的に書類をめくり、揃えて、コピーして、ページをめくる。この動作を何十回、何百回と繰り返し、もはや本能のようになっていた。