「もしもし、こんにちは、どちら様でしょうか?」石塚千恵は丁寧に尋ねた。
「こんにちは、石塚さんでしょうか?」電話の向こうの声は、とても恭しかった。
「はい!」彼女は不思議に思いながらも、心臓がドキドキした。もしかして萌花がまた何か問題を起こしたのだろうか?
「石塚さん、こんにちは。金海グループの笹木社長のアシスタントです。社長がお会いしたいとのことですが、お時間はありますでしょうか?」
「はい、いつ、どこで?」石塚千恵は何度もうなずいた。ちょうど彼に会いたいと思っていたところだった。まさに探し求めていたものが向こうからやってきたという感じだ。
「今、都合はよろしいですか?」
「大丈夫です!」
「では、石塚さんはどちらにいらっしゃいますか?今から車でお迎えに上がります!」