第223章 泡沫と化す

橋口俊樹は石塚千恵を見ると、前に出て迎え、自然に彼女を抱きしめた。「お父さんは大丈夫だから、慌てないで！」

足がふらつく千恵は彼を押しのける力もなく、両手で彼の腕をつかみ、焦りながら尋ねた。「お父さんがどうして脳出血になったの？いつからなの？」

橋口俊樹は彼女を見つめ、言いよどんでから話し始めた。「お父さんは発作が起きた瞬間に病院に運ばれたんだ。時間は無駄にしていない。さっきCTスキャンをしたけど、幸い出血の場所はそれほど重要な部位じゃないし、出血量も多くないから、あまり心配しなくていいよ！」

「うん……」彼は原因を言わなかったが、石塚千恵はバカではない。この件が自分に関係していることを知っていた！

椅子に座り、目を真っ赤にした石塚お母さんは怒りの目で娘を睨みつけた。「これでようやく分別がつくの？これからは親の言うことを聞けるの？お父さんもお母さんも年だよ。あなたはもう私たちに心配をかけずに暮らさせてくれないの？」

石塚千恵は力強く一歩後ずさり、苦しみと無力感の涙が止まらずに流れ落ち、両膝をついてゆっくりと床に跪いた。「ごめんなさい、間違ってた、お母さん。もうお父さんとお母さんを心配させたり、怒らせたりしません！」

今回は決意を固めていた離婚が泡と消え、石塚千恵は現実の前に屈服せざるを得なかった。

……

もし自分のいわゆる幸せが、両親の健康を犠牲にして得られるものなら、その代償はあまりにも大きすぎる！

この出来事を経験して、石塚千恵はようやく自分が大人になったことを理解した。もはや何事も自分中心に考え、自分のことだけを考えることはできない。二人の結婚と離婚は、単に自分のことだけではなく、二つの家族全体に関わることなのだ！

石塚お父さんの脳出血はそれほど深刻ではなく、病院で2週間治療を受けた後に退院したが、多少の後遺症が残り、例えば話すときに口が少し歪むようになった。「千恵、俊樹と帰ったら、必ず仲良く暮らすんだよ。結婚は二人の努力が必要なものだ。最初に彼と結婚することを選んだということは、あなたが彼を愛していたということだ。感情の基盤があるのだから、簡単に諦めるべきではない。別の夫に変えたところで、彼より良い人とは限らない。今手にしているものをしっかりと掴んでおくほうがいいんじゃないか？」