第296章 雲の上から落ちる2

「才能と美貌を兼ね備えた女性ですね。どうぞこちらへ、笹木社長はあなたをずっと待っていましたよ!」学長は特に丁重に褒め称え、そして困ったように石塚千恵と大江雪見を見た。

うーん、この二人のどちらかに席を譲ってもらわないといけないな?

石塚千恵が立ち上がろうとした。

「坂本さんはこちらにどうぞ。ウェイター、椅子をもう一つと食器セットを持ってきて!」大江雪見は手慣れた様子で手配し、もう一方の幹部側に寄り、みんなは少しずつ席をずらした!

石塚千恵は再び座るしかなかった。

笹木蒼馬は一言も発せず、無表情でお茶を飲んでいた。

彼の左側に座っている石塚千恵は、落ち着かない様子だった。彼女はなぜか他人の「物」を借りている気分になっていた。

ちょうど使っている最中に、その物の持ち主が取り戻しに来たような。そして彼女には選択肢がなく、返すしかない。