第579章

「よく見てよ!」石塚千恵はテレビ画面を強く指さした。

「確かに少し似ているね…」鈴木越哉はしばらく見て、頷いた。「額はとても似ているよ!」

彼の位置からは、彼女の額しかはっきり見えなかったからだ。

石塚千恵は首を振り、感慨深げに言った。「まさか私と彼がこんなに近くで出会っていたなんて、あの時どうして彼に気づかなかったんだろう?」

鈴木越哉は口をとがらせた。「お前みたいな見た目協会の常任会長が、タンクトップに黄色いゴム靴を履いて、真っ黒に日焼けした冴えない男に目を向けるわけないだろ?」

石塚千恵は考えてみると確かにそうだと思った。「あの頃の私は確かに見る目がなかったわ!」

「わぁ、私が行った時も彼がいたなんて、あの時私はダニアレルギーで助けられたのに、なぜ私を救ってくれた人は彼じゃなかったの?」彼女は残念そうに叫んだ。

「そうとも限らないよ、もしかしたら彼かもしれない!」鈴木越哉は考えて言った。

「どうして彼なわけがあるの?そんな偶然はないわ。それに、もし私を救ってくれた人が彼だったら、どうして私が気づかないわけ?」石塚千恵は首を振った。

「君は彼の顔を見たのか?君を救った人の?」鈴木越哉は尋ねた。

「見てない!」

「そうだろ、本当に彼が君を救ったのかもしれないよ、あの時行った人はとても少なかったはずだ…何かの任務を実行していたみたいで、とにかく数人だけだった!」鈴木越哉は一生懸命思い出そうとした。

石塚千恵の心臓は乱れて鼓動し、興奮のあまり呼吸も困難になった。「本当かしら?」彼女は心の中で彼女を救ってくれたおじさんのことをずっと覚えていた、こんな偶然があるのだろうか?

鈴木越哉は彼女に電話を渡した。「彼に聞いてみたら?」

「うん!」石塚千恵は震える心を抱えながら、笹木蒼馬に電話をかけた。

笹木蒼馬はあまり機嫌が良くなかったので、電話に出ても黙っていた。「……」

石塚千恵は彼の低気圧を感じ取ることができた。「記者会見の生中継を見たわ!」

「ああ!」彼は低い声で応えた。

「せっかく良いことをしたのに、なぜ人に知られたくないの?この機会に話せば、あなたの個人イメージを回復するのにも役立つのに!」石塚千恵は小声で言った。