第602章 友人の妻を奪う

「あぁ……」葉田辰輝は少し困惑した。父親のこの質問の仕方は何だか奇妙だったからだ。「なんで彼女の電話を恐れるんだよ、お父さん、冗談でしょ!」

葉田さんの表情は一気に厳しくなり、タバコを挟んだ手で息子を強く指さした。「葉田辰輝、警告しておくが、笹木蒼馬はお前の親友だぞ。友達の彼女を横取りするなんてことは許さんぞ!」

「いつ彼の彼女を横取りしたって?お父さん、変なこと言わないでよ!」

「じゃあ今日、蘭子がうちに何度も電話してきたのはなぜだ?」葉田さんは信じられないという様子で尋ねた。

葉田さんはずっと部隊にいて、非常に伝統的な人物だった。教養はそれほどないが、人付き合いには非常に原則を持っていた。保守的な性格の彼は、すぐに息子が友人の婚約者に手を出したに違いないと思い込んだ!

これに葉田辰輝はイライラした。「彼女が僕に電話したいなら、それは彼女の問題であって、僕には関係ないよ!」

彼は信義を裏切るような卑怯者だろうか?仮に親友の妻を横取りするとしても、彼が狙うのは石塚千恵のような美女だろう。

一度友を裏切るなら、それくらいの価値はある!

「もしお前が彼女を誘惑していないなら、なぜ彼女はお前に何度も電話をかけてくるんだ?」

「彼女が電話してきたのは僕のためじゃなくて、笹木蒼馬を探したいからだよ!」

葉田さんはネットニュースを見ない人で、情報源は公文書だけだった。

だから皆が坂本建二と笹木蒼馬の暗闘について議論している時も、葉田さんはまだ何も知らなかった!

「そんなことがあるか?婚約者が婚約者を探すのに、お前を通すなんて?葉田辰輝、お前の父親をバカにするな、わかったか?」

「どうして父さんをバカにできるものか!」

「ごまかしていないならいい。今すぐ、電話線を繋げろ!」葉田さんは電話を指さして命令した。

葉田辰輝は言葉を失った。「お父さん、あと二日待ってくれない?」

なんとかこの危機を乗り切りたかった。さもなければ笹木蒼馬が彼の小学校3年生の時におねしょした話をメディアに売り込んだら、彼の一生の名誉が台無しになってしまう。