秋山直子は早く車に乗りたかった。
しかし、次の瞬間に月島泉が小走りで近づいてくるとは思わなかった。
秋山直子は眉をひそめた。
「いとこ、どうしてここにいるの?これはあなたの友達?」月島泉は秋山直子に話しかけたが、視線は抑えきれずに車に向けられていた。
ランボルギーニは車高が低く、ドアはバットウィング型で、彼女がこの角度から見ると、運転席に座っている人の顔は見えないが、骨ばった美しい手は見えた。
顔は見えなくても、その手から車の持ち主が若く、人を魅了する存在だということがわかった。
月島泉の視線は運転席の人物をじっと見つめていた。
「用事があるの」秋山直子はこういった状況に対応するのが面倒で、横目で月島泉を見て、「先に行くわ」と言った。
「でもいとこ……」月島泉は秋山直子がそんなに早く行ってしまうのを望まず、目を輝かせてスポーツカーを見つめ、非常に熱心な様子で、神崎深一に強い興味を示していることが一目でわかった。