朝倉美咲はこの本から落ちた入場券を見つめたが、手を伸ばして取ろうとはしなかった。
周りに集まった人たちをちらりと見て、冷笑し、何も言わなかったが、その顔に浮かぶ笑みには嘲りが見えた。
秋山直子は最近、昼休みに教室で自習することが少なくなっていた。
森田佳代は秋山直子より早く来ていた。
彼女が教室に着くと、そこは散らかり放題だった。
彼女の机は脇に押しやられ、秋山直子の机は床に倒れていた。床には散らばったラブレターと課外読書の本、そして乱雑に積み重なった復習資料があった。
「直子の机がどうしてこんなことに?」森田佳代はしゃがみ込んで、本を拾い始め、前の席を見上げて目を細めた。「二人は喧嘩したの?」
「いや、俺たちが彼女のところで喧嘩なんかできるわけないだろ?」前の席の男子は首をすくめ、目を伏せて小声で言った。「早く直子さんの物を片付けてくれよ。俺たちは彼女の物に触る勇気がないんだ。」