彼女はイヤホンをつけながら、ボイスチェンジャーをオンにした。
このイヤホンは以前、長野誠たちと一緒に使っていたものだ。
長野誠たちとの関係が明るみに出た後は、もうボイスチェンジャーを使わなくなった。機械音は市販のものと変わらず、感情のない機械的な声だった。
マシューの方はいつも直接的で、彼の声はやや低く響く。「前回言ったことについて考えてくれたか?」
「考える必要はないわ」秋山直子はカーテンを開け、窓の外を見た。
マシューの声が一瞬止まった。「我々に加わっても悪くないだろう。世界中、アメリカも含めて、好きなように動き回れるぞ」
「あなたたちがいなくても自由に動けるわ。あなた、私を捕まえたことある?」秋山直子は淡々と言った。機械音に電流音が混ざり、マシューの耳を痛めた。