物理学部の正門前で、秋山執事と文はまだその場に立ち止まり、秋山直子が去っていく方向を見つめていた。
「秋山執事、大丈夫ですか?」秋山執事がずっと黙ったまま立ち尽くしているのを見て、文は思わず声をかけた。
秋山執事は我に返ったが、文の質問には答えず、ただ震える手で携帯電話を取り出し、秋山蓮に電話をかけた。
「六男様、品物はお届けしました」秋山執事は口を動かし、しばらくして「人も...お会いしました」と言った。
電話の向こうの秋山蓮はバラエティ番組の撮影中で、淡々と「うん」と返事をし、秋山直哉の方向を見ながら「品物は昨夜東京に着いたんだろう?」と言った。
秋山蓮は秋山執事が時間通りに届けなかったことを知っていたが、それも予想の範囲内だった。しかし、幸いにも秋山執事は彼の言葉に従って自ら届けに行った。