道中の花に悩まされ

　秋山直子。田舎育ちで、1年間の行方不明者になり、休学を経て千葉県の名門高校に編入したばかりの、どこか影のある少女。
実母に引き取られた先の新しい家族は、名家の継父、天才と名高い義兄、成績優秀な義妹と、きらびやかな面々。「あの子達の顔に泥を塗らないで」――実母の言葉が、直子の肩に重くのしかかる。

そんな彼女の婚約者は、神崎深一。気だるげな雰囲気とは裏腹に、東京の経済界にも影響力を持つ大富豪の御曹司だ。
彼は周囲にこう紹介する。「俺の直子は、田舎者で世間知らずなんだ。経済のことも疎いし、ちょっと気難しいけど……まぁ、みんなよろしく頼むよ」
だが、それは彼なりの優しさなのか、それとも――？

ある日、深一が追っていた某大物の調査の過程で、彼の有能な部下が偶然衝撃的な事実を発見してしまう。それは、深一が「何も知らない」と言っていたはずの直子の、信じられないような「隠された一面」だった。
（……え、奥様、一体何者なんですか！？）部下は驚愕のあまり、思考が停止する。

これは、お互いの「とんでもない素性」を隠し合うカップルの物語。彼らが秘密を打ち明ける時、何が変わるのでしょう？



二人の隠しこと

「なるほど、東大の物理学科だったのね」景山文子は頷き、秋山蓮の説明に納得した。彼女は頷きながら笑って言った。「だから彼女がほとんど問題を見ずに、答えが間違っていると分かったのね…」


話しているうちに、景山文子の声が突然消えた。彼女はそのまま秋山蓮を見つめ、後の言葉が詰まって、何も言えなくなった。


プラカードを持っているディレクターと現場のスタッフ全員が目を離さずに景山文子を見つめた——


どうしてそんなに冷静に「東大の物理学科だった」なんて言えるの？！


現場は突然、奇妙な沈黙に包まれた。


しばらくして、景山文子は我に返り、彼女は指で秋山蓮を指して、「東大…物理学科？」


今の東大物理学科の学生はみんな演劇科の学生のような顔をしているの？！


「そうだよ」秋山蓮は顔を横に向け、ようやく景山文子から渡されたコートを受け取り、淡々と言った。「彼女も今年の受験生で、ちょうど物理を勉強していたから、頭の回転が一般の人より少し良いんだろう」


351 今の学力優秀者はこんなに傲慢なの？！（二更）