389東大の秀才(十二更)

秋山蓮が後で経営者に言った言葉を秋山勇は理解できなかった。

しかし秋山蓮の「台本も設定もない」という言葉は理解できた。

秋山勇はソファに座り、手にしていたひまわりの種の殻を置くと、素朴な表情で秋山執事を見た。「彼が言っているのは、番組はすべて本物で、制作側は直子に設定を与えていないということだ」

設定がない?

台本がない?

つまり第一回の番組で、あの複雑な脱出ルートや暗号はすべて秋山直子が自分で考え出したものなのか?

特にバイオリン曲のあの部分、あんなに複雑な計算を、紙もなしにどうやってできたのだろう?

彼女の頭脳はどれほど緻密なのか?知識の範囲はどれほど広いのか?

秋山執事は秋山直子が東大物理学科の出身だということは知っていたが、それ以上は知らなかった。今になって彼女が自分の理解できる範囲をはるかに超えていることを理解した。