国境。
この時、巨鰐は地図を片付けていた。木造の小屋の中で、部下たちが出て行った。
脇に置いてあった携帯電話が一瞬光り、巨鰐は何気なく手に取った。
ロック画面に浮かぶメッセージを見た途端、彼のそれまでの無頓着な様子は一変し、河野朝美との無駄話もせずにスクリーンショットを撮り、すぐに河野朝美の電話番号を探して発信した。
「彼に何かあったのか?」巨鰐の声は重く、眉目は硬質で異国情緒を漂わせ、表情は厳しかった。
河野朝美が自分に助けを求めるとなれば、相当な問題だろうと巨鰐は推測した。
彼は数台の車と人員を派遣する準備をしていた。彼の親友はハッカーで、きっと弱っているに違いない……
「問題というほどでもないよ」河野朝美はカメラを担ぎ、他の人たちに挨拶をして車に向かった。「彼女があなたのプライベートコレクションに目をつけたんだ」