道中の花に悩まされ

　秋山直子。田舎育ちで、1年間の行方不明者になり、休学を経て千葉県の名門高校に編入したばかりの、どこか影のある少女。
実母に引き取られた先の新しい家族は、名家の継父、天才と名高い義兄、成績優秀な義妹と、きらびやかな面々。「あの子達の顔に泥を塗らないで」――実母の言葉が、直子の肩に重くのしかかる。

そんな彼女の婚約者は、神崎深一。気だるげな雰囲気とは裏腹に、東京の経済界にも影響力を持つ大富豪の御曹司だ。
彼は周囲にこう紹介する。「俺の直子は、田舎者で世間知らずなんだ。経済のことも疎いし、ちょっと気難しいけど……まぁ、みんなよろしく頼むよ」
だが、それは彼なりの優しさなのか、それとも――？

ある日、深一が追っていた某大物の調査の過程で、彼の有能な部下が偶然衝撃的な事実を発見してしまう。それは、深一が「何も知らない」と言っていたはずの直子の、信じられないような「隠された一面」だった。
（……え、奥様、一体何者なんですか！？）部下は驚愕のあまり、思考が停止する。

これは、お互いの「とんでもない素性」を隠し合うカップルの物語。彼らが秘密を打ち明ける時、何が変わるのでしょう？



二人の隠しこと

最初に川崎市で「アイドルの四六時中」を撮影していた時、マネージャーは渡辺親分と江戸川峰のことについて話し合っていた。


その時から、マネージャーは江戸川峰が雲光財団の人間だと知っていた。


その日、マネージャーは渡辺親分に感心していた。なるほど、綾辻栞がエンターテイメント業界でこんなにも順風満帆なのは、誰も彼に変な契約を強制しようとしないのは当然だ、名優秋山の道のりはずっと平坦だったと。


他のマネージャーは覚えていないかもしれないが、業界内での綾辻栞の神秘的なバックグラウンドについて、そして姿を見せたり隠したりする江戸川峰に関して、マネージャーはその時の渡辺親分の表情まで覚えていた。


秋山直子と江戸川峰が同一人物だということは、つまり秋山直子は雲光財団の人間ということになる……


427直子さん：説明できます（二更）